『二足歩行ロボット 工作&プログラミング』

RAPIRO(ラピロ)の工作がメインコンテンツのこのサイトが、ラピロが表紙の本を読まないわけにはいきますまい、ということで、発売されたばかりの『二足歩行ロボット 工作&プログラミング』を読みました。内容としては表題どおりで、浅草ギ研さんの『ダンボット』とラピロを題材に、二足歩行のプログラミング方法を学びましょう、というものです。

結論から言うと、これからラピロを買って組み立てようという人には絶対にオススメで、すでにラピロを組み上げて遊んでいる人にもすごくオススメです。以下、なぜそう思ったのかをつらつらと述べていきます。

 

以下、これからラピロを組み立てる人にオススメする理由です。

1. 組み立て時の注意事項を事前に知ることができる

ラピロの組み立ての際には、組み立てマニュアルが公式ページで公開されているので、基本的にこのページを見ながら組み立ていくことになります。この本でも同様にわかりやすく組み立て手順をまとめてくれているのですが、公式ページの内容にプラスしてやっておくべきことが書かれています。具体的には

  • 足用のサーボモータの選定
  • Arduino基板への拡張ピンヘッダの半田付け

です。この2点は、一度ラピロを組み上げてしまった後に対応しようと思うと、ものすごく大変です。実際、自分はこのあたりの知識なく組み上げてしまったので、これらの対応は実施できていません。特に、「足用のサーボモータの選定をやっておくべきだ」、というのはこの本を読んで初めて知りました。自分のラピロさんは静止中でも結構な音で「ジー」という音を出しているのですが、ひょっとしたらこれをやっていなかったのが原因なのかも、と思いました。

2. Arduinoプログラミングの基本がしっかり書かれている

ラピロの動作制御にはArduinoが使われているので、ラピロで遊ぶ際にはArduinoを避けて通ることはできません。Arduinoに慣れている人にとってはあまりセールスポイントにはならないかもしれませんが、この本ではArduinoの基本文法についてもかなりしっかり書かれているので、別途Arduino用の本などを買う必要はありません。

3. ラピロの動作制御のArduinoコードが詳細に説明されている

ここで公開されているラピロの動作制御用のArduinoコードについて、(誇張ではなく)ほぼすべての行に説明用のコメントが付記されています。このコードがどういうロジックで動いていて、またオリジナルの動作を追加したいときにどうすればいいのかまで、びっくりするぐらい詳細に書かれています。過去に自力で解読しようとして大変苦労したので、これのありがたみがよくわかります。

 

以下は、すでにラピロで遊んでいる人にもオススメする理由です。

1. 新しい発見がある

Arduinoや電子回路についてはプロレベル、という人からすれば知ってて当然のことかもしれませんが、「オリジナルのソースをちょっと修正して、ラピロの動作を変更するぐらいはできるぜ」レベルの人が読めば、結構な発見があると思います。自分の場合は、以下はこの本を読んで初めて知りました。

  • ラピロのArduino基板からI2Cを引き出せる
  • RAMの使用量を節約することで、ラピロの新しいモーション定義を追加できるようになる

特に後者は、ラピロをフルに動き回らせようと思ったら、ほぼ必須の改良ではないかと思います。

2. ラピロの改造方法が豊富に記載されている

Raspberry Piを使わず、Arduino基板だけで距離センサ・音センサ・静電タッチセンサ・無線モジュール(XBee)を組み合わせる方法が、ソースコードレベルまでしっかり書かれています。事前に先に書いたArduino基板への拡張ピンヘッダの取り付けが必要ではありますが、「Arduinoだけでこんなことまでできるのか!」ということに結構驚くかもしれません。記載の内容をそのまま使うことはなくても、「これをこうすれば、こんなこともできるかも!自分ならこうする!」という発想の種にもなります。

 

と、こんな感じの理由でオススメしています。

基本的に良いところばっかりですが、重箱の隅をつつくレベルで改善してほしいところがあるとすれば、

  • 「無線モジュール(XBee)の取り付け」の部分の解説が、XBeeの完全な初心者だと動作確認にちょっと戸惑うかも
  • ダウンロードできる動画がちょっと寂しい(ラピロについては、ちょびっと動く動画が二つあるだけ…)

ぐらいです。せっかくラピロにいろんなセンサを盛り込んでいるので、「ここまでやればこんなことができるよ!」というのを見せてくれるような動画があれば良かったかなーと思います。

あと最後に一つだけ書いておくと、Raspberry PiとArduinoの連携動作についての解説は全くありませんので、それだけ注意してください。この本のテーマ外になるので。

 

ということで、ちょうど夏休み前ですし、「これからラピロをいじりたおしてやるぜ!」というすべての人に対してオススメです。良本。