第二種電気工事士 受験&合格体験記

2024年度下期の第二種電気工事士の資格試験を受けて無事に合格できましたので、せっかくなので合格までに向けて自分がやったこと(←独学のみ)を記録しておきます。備忘録兼、今後受験を予定している誰かのお役に立てば幸いです。長いですが、鬱陶しい広告がないので多分見やすいと思います(※少しAmazonリンクがあるぐらい)。

前提

受験者(私)のバックグラウンドは以下になります。

  • 理系大学院の修士卒(結構前)
  • 仕事は製造業のIT系
  • 勉強に確保できる時間は多くて平日30分、休日2時間ぐらい
  • 特に資格取得を趣味にしているわけではない。というか全然持っていない
  • 趣味で電子工作はしている
  • 電気工事の実務経験はゼロ(工具も持ってない)
  • オームの法則ぐらいは理解している。交流はよくわかっていない。

 

試験までのスケジュール

「受けてみようかな」と思い立った(←家のコンセントを替えたくなった)のが丁度、下期の申込開始日の二日前でした。そこから、学科試験を筆記で受けるとすれば二ヶ月はあったので、二ヶ月あればなんとかなるかと思って申し込んでみました。

 

学科試験:試験日までの準備

学科試験の定番本、とかは全然知らなかったので、とりあえず以下を購入しました(※私のときはこれの2024年度版です)。

メインはこれで勉強しました。他の本は使ってないので正確な比較にはならないと思いますが、使った感想としては、「試験範囲は網羅されている(=全部理解すれば絶対受かる)けど、わかりやすく学べるような工夫は特にはない」という印象でした。覚えるべきことが淡々と並べられている感じ。フルカラーではある。

実際、最初はこれだけで勉強を進めていたのですが、イマイチ頭に入りにくく、1週間ぐらいしてから以下の本を買い足しました(※こちらも、私のときはこれの改訂5版)。

表紙文言通りの本で、おそらくこれだけでは足りないですが、メインの学習本の理解をかなり助けてくれるような内容です。マンガメインで読みやすい。オススメです。

 

だいたい2〜3週間ぐらいでメインの本を通して読み終わったので、あとはひたすら過去問です。メインの学習本と同じシリーズのこちらを使用(※例によって、私の場合はこれの2024年度版)。

過去問はこれ一冊で充分でした。時間を測りながら、自作のマークシート(←パワポで適当に作ってプリンタで印刷)に、計算過程を書いたりマークをしていく形で解答。こんなやつ。

本に直接解答や計算過程を書き込まずにこうするのは、以下のようなメリットがあります。

  • 過去問をもう一度解きたくなったときに、前回の痕跡を見ずに済む
  • 実際の筆記/CBT方式に近い形になるので、試験当日にも違和感がない

特にCBT方式だと、問題文はディスプレイに表示されるので、問題文の周辺に直接書き込むことはできません。書き込みは全て、別で支給されるメモ紙の方にしていくことになりますので、当日に少しでも違和感を減らしたい場合は、練習もそれに近い形にして慣れておく方が良いと思います。

 

学科試験については、申込時点では全員筆記試験扱いになっていますが、途中でCBT方式に切り替えられる期間があります。CBT方式は自分の好きなタイミングで試験を受けられるメリットがありますが、その代わり、筆記試験よりも早く実施されます。

もし、切り替え期間までに過去問でコンスタントに80点以上をとれているようなら、CBT方式に切り替えて、早めに筆記試験を終わらせてしまうのが良いんじゃないかな、と思います。ある程度点がとれるようになった状態を一ヶ月以上キープしようとすると、日々「忘れないように忘れないように」みたいな感じになってしまうので、勢いのまま受けてしまって早々に細部を忘れてもよい状態にした方が、気持ち的にラクだと思います。もちろん、早めに技能試験の準備を開始できるメリットもあります。

私は過去問を解き始めて1回目は合格ラインギリギリ(60点ぐらい)でしたが、5回目ぐらいからコンスタントに80点以上を取れるようになってきました。ちょうどCBT方式への切り替え申請が始まるタイミングだったので、CBT方式へ切り替えることにしました。最終的に、CBT試験日当日までに過去問を17回分やって、無事に50問中47問正解(94点)で学科試験を突破できました(←CBT方式の場合は、受験直後に正解数が通知されます。ただ、合格に必要な点数はあくまで非公開なので、合否までは表示されません)。

 

学科試験:解き方の工夫

時間的にはかなり余裕のある試験(←120分あるが、淡々と解いていけば、見直し含めても70分くらいで終わる)なので、解く順番とかは特に意識せず、前から順番に解いていくので特に問題ないと思います。ただ、電気理論の問題から始まるので、苦手意識のある人はそこだけ後回しにする、というのはありかもしれません。

自分の場合、試験が始まるとすぐ、問題を解く前に、以下のような表を余白に書き出していました。これは丸暗記です。

それから問題を解き始めて、必要に応じてこの表を参照しながら解きます。これで3~5問(6~10点)分ぐらい稼げます。

「いや、表の丸暗記は結構ツラい」という方もおられるかもしれませんが、自分の場合はスタートの数値だけ覚えて、あとは作り方を覚えるような感じでした。まず、

単線の直径1.6mmと2.0mmの許容電流。ここは丸暗記。「イロニナ ニサゴ」(1.6mm 27A、2.0mm 35A)みたいな感じで、呪文でも何でもよいので。

次により線の断面積と許容電流。1.6mmと2.0平方mmの許容電流は同じ。1.6mmが2.0平方mm、2.0mmが3.5平方mmに対応することは、リングスリーブの大中小計算のときにも使用するので、これも丸暗記。許容電流35(A)から3.5平方mmを思い出すのもありかもしれません。

ここからは足し算・掛け算の方法を覚えて表を作ります。こんな感じ。

この足し算・掛け算のやり方は、誰かのWeb記事を参考にさせて頂きました(誰のかは忘れてしまいました…すみません…)。

これで直径・断面積と許容電流の関係の表は作成完了です。これに、以下のように「コンセントの定格電流」を付け足します。

これは、分岐回路の問題を解くときに使用します。

これで表としては完成ですが、ついでにあと2つメモしておきます。

線の断面積の和からリングスリーブの大きさを選択するための評価式です。ただ、例外もあるのでご注意ください。詳しくは「すい~っと合格コミック マンガで〝そこそこ〟わかる 第2種電気工事士 学科+技能入門」をご参照ください。

それから、同一管内の電線本数と電流減少係数の関係。

これは先頭の数字が”0.70″、後の変化幅が”-0.07″でとても覚えやすいと思います。

 

技能試験:試験日までの準備

続いて技能試験編です。とにもかくにも工具が必要なのですが、少しでも安く済ませたい方は、フリマアプリで探すというのも一つの手です。資格がとりたかっただけで、それが済んだら工具は不要、という方が出品されているケースがあるので。

私はフリマアプリでセットで買いましたが、そこそこ信頼できそうな出品を選んで買おうとすると、結局Amazonで買うのとそこまで差はなかったりするので(1,000~3,000円差ぐらい?)、吟味するのが面倒な方は、Amazonでセット品を買ってしまうのがラクだと思います。

指定工具品以外でほぼ必須になるのが、ケーブルストリッパーです。これは絶対買った方が良いです

技能試験は学科試験と打って変わって時間勝負の試験(←40分しかない)なので、作業中の道具の持ち替えは極力減らさなくてはいけません。ケーブルストリッパーがあれば、これ一つでケーブルの長さ計測、外装剥き、被覆剥き、切断が可能になる(輪作りもできる)ので、時間をかなり節約できます。ほぼ必須のアイテム過ぎて、指定工具ではないですがセットに含まれていることが多いと思います。

それ以外で個人的にあると便利だなと思ったのが、ホーザンの合格マルチツールです。

これが活躍するのは、アウトレットボックスを使用する課題に取り組むときです。これらの課題では、以下の作業が発生します。

  • ゴムブッシングの穴開け
  • 電線管の接続

ゴムブッシングの穴開けは、通常は電工ナイフを使用しますが、このツールがあれば電工ナイフを使う必要がなくなります(=電工ナイフを使うのはVVRケーブルの外装剥きのときだけで良くなる)。

電線管の接続のときには、

  • ねじなし電線管をボックスコネクタに接続するときの止めねじのねじ切り
  • コネクタをボックスにロックナットで固定

の作業があって、通常はウォーターポンププライヤーを使うのですが、これが結構、慣れないと難しい。工具が大きくてやりにくい。その点、このツールはコンパクトなので、ネジをかなりしめやすくなって時短になります。あと、本番ではあまり出番がないかもしれませんが、練習だと、スイッチやコンセントに接続した線を取り外して再利用する、という作業が何度も発生します。普通はマイナスドライバーを使って線を取り外すのですが、こっちのツールの方がコンパクトで取り外しやすいです。その点でもあると便利です。

あとは、リングスリーブを圧着する前に配線をまとめるときに使用するクリップ。線が2本のときは無しでいけるのですが、3本以上になってくるとクリップなしだと線をまとめにくくて、時間をロスします。自分は以下を使用していました。

ただ、このクリップについてはわざわざ買わなくてもホーザンの練習キットを買うと付いてきたりしますし、別にこれじゃなくても、一般的なダブルクリップでも代用できると思います。

 

工具については以上です。で、おそらく多くの方が気になるのは、「何回(何周)練習すれば大丈夫なのか?」というところじゃないかなと思います。私の感覚だと、「一周(=13回)だとやや危うい、二周(=26回)やれば充分」という感じでした。

技能試験はとにかく時間勝負(制限時間40分)なのですが、1回目の練習では教本を見つつ手順を確認しながらやってたら、普通に90分ぐらいかかりました。「なんとかなるものなのかこれは?」と思いましたが、道具の使い方や手順が身につくとともに時間が短くなっていき、一周目の10回目ぐらいには、制限時間内に作業を終えることができるようになっていました。

ということで、一周したぐらいだと、おそらく時間内には間に合うようにはなりますが、あんまり余裕はないと思います。これが、二周目を終えるぐらいまで練習すると、作業自体は30分ぐらいで終わって、10分見直しできるぐらいになりました。実際、本番でも10分少し残して作業は終わりました。

二周目の中盤になると、「慣れてきたがゆえのミス」が出てくるようになります。具体的には、

  • 無意識にケーブルを切ったら、10cm短く切ってしまった

とか、

  • 複線図の段階で変に後工程をラクにしようとした結果、配線の色の指定(白と黒)を無視してしまった

とかです。

で、「イカンイカン」と改めて注意点として認識し直して二周目を完遂させて、間を置かずに本番に臨んで無事合格、という感じです。試験当日、終了後に試験会場を退出するときに他の人の作品を見ながら退出していたのですが、一割ぐらいはそもそも完成まで至っていないように見えましたので、やっぱり練習量って大事だなと思いました。

というわけで、個人的なオススメは「二周」です。お金に余裕があるなら、もちろん三周でも良いです。人によっては一周で充分なレベルに到達する可能性はもちろんあるので、練習キットはとりあえず一周分、不安があれば線材+リングスリーブ一周分追加キットを買う、とかでも良いと思います。私はそうしていて、最初は以下を購入しました(※繰り返しますが、私が買ったのは2024年用)。

ちなみに、二周分(26回)とはいいながら、ミス少なめで材料を無駄なく使っていけば、+2〜3回は余分に練習できます。私の最終的な練習回数は28回でした。

 

技能試験:解き方の工夫

まず、以下の本に書かれているテクニックを習得する、が大前提です(※くどいですが私が買ったのは2024年版)。

本はこの一冊で充分だと思います。実は、学科試験と同じシリーズの技能試験版も先に購入していたのですが、実践的ノウハウの記述が少なめな気がした(=良くも悪くも教科書的)ので、「すい~っと合格コミック マンガで〝そこそこ〟わかる 第2種電気工事士 学科+技能入門」で紹介されていたこちらを買い直して、メインで使用しました。

この本に書いてあるとおりに課題に取り組めば、問題なく時間内に終えられるようになると思います。ただ、人によってはやりにくい手順とかも一部あったりすると思うので、「私の場合は最終的にこういうやり方になりました」というのを一例として紹介したいと思います。「こうした方が良いのか」ではなく、「こういうやり方で受かった人もいるんだな」という視点で見てもらえればと思います。

複線図

一番最初にやるべきことは複線図を描くことです。本によっては「2〜3分で描きましょう」と書いてあったりしますが、個人的には5分かけても大丈夫だと思います。ただ、この5分は、見直しを含めて「このとおりに作れば絶対に大丈夫」というところまで作り込めて5分、という意味です。

個人的には、複線図をさっと描いて作業に入り、作業後の見直して配線ミスに気づいてやり直しをするより、作業に入る前に複線図をしっかり見直して、そこでミスに気づいて複線図を描き直す方が、リカバリーにかかる時間は短くて済むと思います。終了間際にミスに気づくとなおさら焦りますし。つまり、見直しは最後にやるのではなく、複線図を描いて作業に入る前に一回入れた方が良い、ということです。

参考に、私が試験本番で問題用紙の余白に書いた複線図を掲載します。三路スイッチの問題が出題されました。

よーく見ると、三路スイッチの間の配線のところに消しゴムをかけて書き直した跡があると思います。見直した結果、色の割り当てにミスがあることに気づいて、作業に入る前に修正できた、という実例です。

長さの測り方

先の本では「手の大きさを目安にしましょう」みたいなことが書かれていましたが、これは自分に合わず。手の開き方とかで長さが変わりそうなのが嫌で、最終的には「長さは全部、ケーブルストリッパーで測る」に決めました。スケールを使うのは、完成後の完成物の長さを整えるときと、試験開始直前に配布物のケーブルの長さを確認するときだけ。

モノに依るかもしれませんが、ケーブルストリッパーは長さが測れるようになっています。

こことかこことか。

こことかで。例えば、ケーブルを5cm剥きたいときは、

こう。10cm剥きたいときは、

こう。25cm剥きたいときは、

こうしてまず15cmを測った後、左手親指先端のところまでケーブルストリッパーをスライドさせてきて、あと10cm測る。

こう。だいたいで問題ありません。

ケーブルストリッパーで測ると、長さを測った後にそのまま工具の持ち替え不要で外装剥きや芯線出し、ケーブルの切断を行えるので、時間短縮になります。

ちなみに私は最初、ケーブルストリッパーでケーブルの切断ができることに気づいておらず、わざわざペンチに持ち替えてケーブルを切断していました。そら時間がかかる。

ケーブルストリッパーでの外装剥ぎ・被覆剥ぎ位置

慣れてくれば自然にできるようになることかもしれませんが、一応。

外装を剥くときにケーブルストリッパーのどの位置で挟めばOKか(←1.6mmx2芯、1.6mmx3芯、2.0mmx2芯、2.0mmx3芯の4箇所ある)と、被覆を剥くときにどの位置で挟めばOKか(←1.6mm, 2.0mmの2箇所ある)については、いちいちケーブルストリッパー上の表示で確認するようなことはしません。いきなり挟みます。そのためには、どこで挟めば良いか、というのを覚えておかなくてはいけないのですが、少なくとも自分が使用していたストリッパーについては、「剥ぐのが大変そうなものほど(=力が要りそうなほど)ストリッパーの中心側」というのを意識しておくと、間違いがありませんでした。

芯線出しの処理

本に書いてあるとおり、被覆を2cmほど剥いてから、必要に応じてペンチの幅(約12mm)で芯線を切るのが基本です。

このときの2cmは、数mmほど±があったところで作業には全然影響ない(←極論、ペンチ幅の約12mmより長ければOK)ので、わざわざケーブルストリッパーをあてて測る必要はありません。目分量で全然問題なし。これは、本にも時短テクニックとして書かれている内容です。

芯線を切って長さを調整するときは、接続先の器具(シーリングクローゼットとか埋込連用コンセント等)で指示されている長さに切り揃えるのが基本ですが、こちらも本に記載のあるとおり、見て合わせなくてもペンチの幅(約12mm)で切れば大抵うまくいきます。なので、そう割り切るのも一つの手ですが、微妙に長い短いがあることはあるので、自分の場合は、

  • 芯線を差込形コネクタに挿すとき → ペンチ幅+1mmぐらい
  • 芯線を器具に挿すとき → ペンチ幅-1mm ぐらい

を意識して切るようにしていました。もちろん目分量です。

作業単位

自分の場合は「リングスリーブ or 差込形コネクタに挿す直前まで」を一つの作業単位にしていました。例えば、

この部分から着手すると、

ここまでをまず作ります。続いて、

この部分を作成するときは、

ここまで一気に作ります。

左は差込形コネクタ接続、右はリングスリーブ接続なので、左側は芯線の長さもそれに合わせて切り揃えるところまでやります。

こんな感じで部品をつくっていくと、あとは本当に、当たり前ですがリングスリーブとコネクタに差し込んでまとめていくだけで終わりになります。

このあたりの作業単位の区切り方は人それぞれだと思いますが、自分がこのやり方に落ち着いた理由は、最後に全体の部品を見ながら「こっちはリングスリーブで、こっちはコネクタで」みたいに考えながらコネクタ用に芯線の長さを調整するのが、ややこしくて時間がかかったからです。各部品単位を作っているときに「こっちはリングスリーブで、こっちはコネクタで」を考えながら作るようにすると、この場合は考える範囲は絶対に2本 or 3本だけで済むので、迷いが少ないです。また、このやり方で進めると、いざ線をまとめるときに、芯線の長さでリングスリーブ接続かコネクタ接続かも確認できるようになるので、線をまとめるときのミスも減らせます。これは、「A部分はリングスリーブで、B部分はコネクタで」みたいな出題のときはあまり恩恵がないですが、「4本接続のところだけコネクタ、他はリングスリーブで」みたいな出題のときには、区別しやすくなって地味に役立つと思います。

 

まとめ

以上、私の第二種電気工事士 受験&合格体験記でした。ちなみに、勉強は本当に上記の本ベースでしかやっていなくて、どこかの講習を受けに行ったり、試験対策のYouTube動画を観たりとかは全然していないです(←そういうものがある、ということをそもそも知らなかった)。

合格はできましたが、多分たまに自宅のコンセントやスイッチを替える、ぐらいのことしかしない気がしていて、せっかく身につけたノウハウをすぐに忘れてしまいそうだったので、こうして記録に残しておくことにしました。自分の備忘録みたいなものなので、「こうすれば絶対受かる!」みたいなことを言うつもりは全然ありません。「こういうやり方で受かった人もいるんだな」ぐらいの参考にしていただけますと幸いです。

 

 

さっそく、年代物だったスイッチを交換するなどしました。三路ホタル&外灯用パイロットの組み合わせ、ワイドハンドルに変更。よき。